モモの育て方・栽培方法
バラ科
邪気をはらう力があるとされた、ひな祭りで有名な果樹です。天日に花が満開になる姿も美しいです。
※画像をクリックすると拡大します
●水はけと日当たりのよい場所で、根が過湿にならないように栽培する。
●全国で栽培できるが、糖度の高い甘い果実を作るには福島・山形県以南が適地。
●剪定や摘蕾を適切に行わないと、よい果実がつかない。
モモの果樹としての特徴
寒さには比較的強い果樹で、休眠期にはマイナス15℃の低温にも耐えます。一定の低温期間のあとに気温が上がりはじめると、休眠から目覚めて生長するため、冬に寒くならない沖縄など南の地域では生育があまりよくありません。また、北の地域などで開花期以降に晩霜の害を受けると結実が悪くなります。さらに、果実の肥大期に低温にさらされると、肥大・成熟しにくくなります。果実は、開花後50日間で一定の大きさになり、その後肥大が鈍くなりますが、収穫適期の2~3週間前になるとふたたび急激に肥大して成熟します。このときに十分な日照と適度な養分・水分があれば、おいしい実ができます。
モモの栽培条件と品種選び
果実の肥大期(品種にもよりますが、およそ7~8月)に雨が少なく、日照量が多い地域で、昼夜の温度差が少ないことがよい果実を実らせる最高の条件です。モモの品種は、早生から晩生種まで数多くありますが、収穫期の早いものは、果実の肥大する時期が梅雨と重なるものもあります。雨に多くあたると実が落ちてしまうので、中・晩生の品種を選ぶのがよいでしょう。本来、モモは1本だけでも結実しますが、「白桃」「浅間白桃」など品種によっては花粉がほとんどないものもあるため、それらを栽培する場合は、「あかつはくほうき」「白鳳」などといった花粉の多い品種を一緒に植えます。庭先で広いスペースがとれない場合は、人工授粉するか、1本でも結実する品種を植えましょう。
モモの栽培方法
モモは根の過湿を嫌うので、植えつけ1~2か目前に、たっぷりと腐葉土や堆肥を混ぜ込んでおき、水はけのよい土壌をつくっておきます。暖地では晩秋、寒冷地では春先に植えつけを行います。苗は、傷んだ根や太い根を切り戻し、根を広げるようにして浅植えします。スペースのあまりない庭では、地面に対して70度ほどに傾けて植えつけ、仕立てをY字形立木仕立てにすると、コンパクトで日当たりのよい樹形に仕立てることができます。植えつけ後はたっぷりと水をやり、支柱を立てて支え、60~80cmほどの高さにある芽の上で剪定します。
根が過湿に弱く、水はけのよい、空気を多く含んだ砂礫層の土壌を好みます。また、目陰では実もつかず、枝も枯れやすくなるため、日当たりのよい場所を選んで植えます。
苗木を斜めに植え、日当たりを確保する
日当たりを好み、樹冠内に日光があたらないと下枝が枯れてしまいます。Y字形の立木仕立て(開心自然形)が一般的ですが、植えつけ時に主幹を斜めに少し倒しておくと、日当たりも確保でき、また、コンパクトに仕立てることができます。
植えつけ1年目の側枝はもとから切り取り、主枝の先端を切り戻します。2年目に地面から40cmほどのところから出たものを第1主枝とします。3年目から開花して結実しはじめます。このときから、主枝上に出た直立した強い新梢を夏に間引き、日当たりが悪くならないようにします。
果実のまわりの葉に十分な日光があたる剪定を行う
6月ごろ、枝が混み合い、葉が茂って樹冠内に日光が入らないようになってきたら、内側に向かう枝、混み合った部分の枝を間引いたり切り戻したりして、果樹の内部、とくに果実周辺の葉に日光があたるようにします。
冬は短い側根をつくるための剪定を行う
モモの剪定のポイントは、亜主枝に短い側枝を発生させ、そこから新梢を伸ばすことです。亜主枝から出た側枝は、亜主枝に最も近い1~2年枝のついた枝の先で切り戻すか、または枝が混み合っている場合は根元で間引いてしまいます。勢いの弱い枝は、基部の2~3枝を残して切り戻し、残った枝も3分の1ほど強めに切り戻します。ただし、生長の勢いのよい若い樹で強剪定を行うと、栄養生長ばかりに養分が使われ、夏になっても新梢が伸び続け、果実に養分が回らずに生理落果しやすくなります。剪定は、前年の生長の様子から、樹勢が強いときには弱い前刀定を、樹勢が弱いときは強い前刀定を行うようにします。
肥料を吸収する力が強く、肥えた土壌であればあまり肥料を施す必要はありません。逆に肥料を与えすぎると、樹勢がいつまでも落ち着くことなく、花芽がつかず、実をならせることがむずかしくなります。通常は、11~12月、落葉後に、窒素、リン酸、カリが10-6-8などの化成肥料を、植えつけから4年目までは1株あたり200g、それ以降は600gほど施します。
白桃系のモモは人工授粉する
ほとんどの品種は自家受粉しますが、白桃系のモモには花粉がなく、他品種の花粉を人工授粉する必要があります。他品種の花を取って直接花につけるようにして受粉させてもよいですし、他品種のつぼみを集め、葯だけを取り出して天日に干し、葯が開いて出てきた花粉を集めて、やわらかい筆などを使って受粉させてもよいでしょう。
果実は結果枝15~20cmに1個が目安
たくさんの花をつけて開花しますが、半数以上が生理落果します。また、数多く実をつけさせると、果実が肥大せず、樹も弱くなって翌年の花芽が育ちにくくなります。そこで、開花前(3月中~下旬)に、長・中果枝についた赤く膨らんだつぼみのうち、枝の上面にあるものを指でなでるようにして取り除きます。果実は下側に育てたほうが肥大がよいで、枝の下面のつぼみは残します。花粉のない品種では摘蕾は行わなくてもかまいません。開花、結実後の5月中~下旬になったら、結果枝15~20cmに1個程度の割合になるように摘果します。10cm以下の短果枝になった果実は、枝4~5本に1個程度に摘果します。
モモノゴマダラメイガやシンクイムシ類などの被害から果実を守るために、摘果後すぐに袋かけを行います。
7~8月、果実の成熟期になったら、袋の底を少し破って果実を見ます。果実全体が乳白色になり、果項部に赤みがさしてきたら、袋をはずし、5~7日、白桃など色のつきにくいものは2週間ほど日光にあてて着色させ、十分に熟したら収穫します。