ナシの育て方・栽培方法
バラ科
『日本書紀』にも記される、五果のひとつ。日本ナシはシャリシャリした歯触りが特徴です。
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●夏の乾燥に注意し、気候に適した品種を選ぶこと が重要。
●青森県~鹿児島県。
●赤ナシ系は比較的育てやすい。
ナシの果樹としての特徴
ナシは、リンゴのような形のアジア系ナシと、いわゆる洋ナシ型のセイヨウナシ、中国ナシに分類されます。日本のナシはアジア系で、もともと日本の中部地方以南に野生にあった二ホンヤマナシを改良したものです。本来日本の多湿な気候に適応した果樹ですが、品種のなかには雨に弱いものもあります。
ナシの栽培条件と品種選び
日照量が多く、湿度があまり高くない場所で、適度に保湿力のある土壌が適しています。日本の気候に適応していて雨にも強いのですが、「二十世紀」は梅雨の時期に雨や曇天が続くと、黒斑病の発生が多く、やや栽培がむずかしいでしょう。その点、「豊水」や 「幸水」といったいわゆる赤ナシは多湿にも強く、家庭園芸としては育てやすい品種です。また、ナシは他品種の花粉を受粉しないと結実しません。授粉樹を用意して花粉を人工授粉するか、他品種を混植して虫媒させるようにします。ナシは接ぎ木も比較的容易にできるため、1本の木に数品種の授粉樹を高接ぎしてもよいでしょう。1本のナシの木で何種かの果実の味を楽しむこともできます。混植の場合も高接ぎの場合も、日本ナシとセイヨウナシの組み合わせも可能です。
ナシの栽培方法
12月、あるいは根や芽が動きはじめる直前の3月ごろに苗木を植えつけます。植えつけ後、支柱をしっかりと立てて苗を固定し、70cm~1mの高さに剪定をします。充実した大きな芽がついた樹勢の強い苗の場合は高めに、樹勢の弱い苗はやや短めに切り返すようにします。
日陰に弱いため日当たりのよい場所に植えつけます。水はけのよい土壌であることも大切ですが、乾燥には弱いため、有機質が多く、適度な水分を保てる土壌が必要です。
「棚仕立て」で収量を増加
「立木仕立て」「扇状形仕立て」などができます。また、主幹を2本つけた「U字形仕立て」や、1本の主幹から真横に枝を誘引する「パレット仕立て」として、壁面や塀の南面に張りつくように仕立てることも可能です。しかし、コンパクトな樹形にして、収量も増やしたいのであれば「棚仕立て」にするのがよいでしょう。棚仕立てであれば、剪定や摘蕾・摘果といった管理も楽に行えます。
樹が休眠している1~2月に冬の剪定を行います。並行して伸びる枝の一方、上向きにまっすぐ伸びている枝、真下に伸びている枝、枝が混み合っている部分を間引き、残した枝は誘引します。短果枝も3~4年以上結実させると、弱って花芽がつきにくくなります。古くなった側枝の基部の横から出た新梢を間引かずに25cm程度に切り返し、先端部の2芽を残します。6月ごろ、残した2芽から伸びた新梢のうちの充実したものを残してほかの枝を切ります。次の冬の剪定のときに、古くなった側枝を切り、更新した側枝を誘引します。
肥料は秋と冬に
収穫後 (10月)、1㎡につき50gを目安に、化成肥料を施します。また、12~1月には基肥としてその倍量を施します。基肥は、完熟した堆肥などでもよいでしょう。
授粉樹が近くにあれば虫媒されますが、確実なのは授粉樹の花を使って人工授粉を行うことです。ナシの花は1つの花芽から7~8個の花をつけ、周囲のものから咲きはじめます。外側から3~4番目の花が最も肥大して、形のよい実になります。そのため、人工授粉はそれらの花に行うようにします。1つの花で10個ほどの花に授粉できます。
枝の先端は芽かきする
このとき注意するのは、枝の先端についている花のかたまりには受粉させず、芽かきをしておくことです。枝の先端の花が結実すると、果実の重みで果軸が折れて落下してしまう可能性が高いためです。
ナシを育てるうえで重要なのが摘果です。摘果は2回に分けて行います。1回目の摘果は開花後30~40日以内に行います。このときは、1つの花のかたまりに、最も肥大した1つの果実を残すように摘果し、その10~20日後に、果実の形状と育ち具合を見て、2~3個のうち1個程度を残して摘果します。
「二十一世紀」は2回の袋かけを行う
糖度の高い甘い果実を育てるためには、袋かけはしないほうがよいのですが、袋かけをすれば、農薬を最小限に抑えて、病虫害から果実を守ることができます。袋かけは、摘果後の5月下旬から梅雨入りまでに行います。「二十一世紀」については受粉後15~30日に小袋をかけ、その後40日ほどして果実が肥大したら大袋かけを行うという、2回の袋かけをします。
ナシは、枝の先端のものから順に熟します。大きさ、果皮の色などで熟期を判断し、下がった果実を斜め上に持ち上げるようにしながら収穫します。