種まき
気温や土の様子を見ながら確実に発芽させましょう。
良い種を信頼できる店で入手する
市販されている袋入りの野菜の種は、発芽率が示されているとおり、適切な時期、条件でまけば、だいたいは発芽します。ただし、日当たりのよい場所に陳列されていたり、売れ残った古い種だったり、品種名のないいいかげんな種が売られていることもあります。これでは、記載されているより発芽率も落ちてしまいます。種は信頼のおける回転のよい店で手に入れましょう。食材として買ってきた果菜や豆類から、種をとってまいてもよさそうですが、複雑に品種改良された野菜は、種をまいてもよほどの好条件でなければ発芽しない、親と違う性質になる、病気を持っていて収穫できないということが非常に多いです。収穫した野菜を食べたければ、まくためにつくられた種を入手するのが確実です。新しい種がよいといっても、ニンジンやインゲン、タマネギなどを除き、低温乾燥状態で保存すれば、3年くらいはまけます。乾燥剤を入れた密閉容器に入れ、冷蔵庫に保存しておけばよいでしょう。
野菜よって種の扱い方が変わる
種にはそれぞれ発芽適温があるので、その温度であればだいたい2~3日から1週間程度で発芽しますが、中には1カ月ほどしてまいたのも忘れたころに芽を出すものもあります。種まき後に休眠状態に入るものや、水分がなかなか吸収されないものは、発芽が遅くなるからです。そういう種類の種はあらかじめ一晩、種を水につけておいたり、種に傷をつけたり、いったん寒さに合わせてからまいたりします。日本の気候に合わせて成長させるため、発芽適温でないときにまく場合もあります。寒すぎるときは、ポリマルチで地温を上げる、ビニールトンネルをつくるなどして温度を上げるか、最初に管理のしやすい箱まきやポットまきにし、日中は日当たりに置き、夜は軒下に移したりトンネル内に入れるといった方法が有効になります。一方、秋冬に育てる野菜はだいたい15~20度くらいが発芽適温ですが、収穫の都合で暑いうちに種をまくこともあります。その場合は、水につけた種を涼しい場所に置いて芽を出させる「芽出し」をしてからまきます。箱まきやポットまきにしたり、畝に寒冷紗のベタ掛けをすることもあります。
発芽率などを考慮してまき方を決める
収穫する場所に種をまく「じかまき栽培」と、ポリポットや箱などにまき、苗をつくってから畑に植えつける「移植栽培」があります。移植を嫌うものや短期間に育成するものはじかまきをしますが、移植することで細根がふえるもの、気温が安定しない時期にまきたいときなどは、移植栽培にします。移植栽培については、次ページの苗づくりの項であらためて解説します。種のまき方としては、全体に均等にまく「ばらまき」、一列になるようにまく「すじまき」、間隔をあけてまき場所をつくり、1カ所に数粒ずつまく「点まき」があります。いずれも、発芽した中から成長の順調なものを残すよう、間引きながら育てます。発芽率が悪い条件のときや、小さいタネは多めにばらまきにし、発芽しやすく大きなタネは少量を点まきにします。種は発芽しなかったり、成長しない場合も考えて少し多めにまきます。苗が小さい間は込み合うくらいのほうが、風や低温高温など環境の変化にも耐えやすいからです。ただし、量が多すぎると全体に貧弱な発芽になるので注意しましょう。
発芽まで乾燥と覆土の厚さに注意する
種の発芽条件には、適切な水分と光線が必要になります。種まき後は普通、種の大きさの2~3倍の厚さに土をかけ、軽く押さえて(「鎮圧」という)種と土を密着させ、たっぷり水やりをします。水分を吸収しにくいかたいタネは、上記のように水につけてからまくこともあります。種と土にすき間があると、種が水分を吸収できず、なかなか根が出ません。特に微細なタネでは水やりの前にしっかり土になじませないと、水に流されてしまうことにもなります。覆土は種が好光性か嫌光性かによってかわります。ネギやダイコンのように光線をさえぎらないと発芽しない野菜、ゴボウやミツバのようにさえぎられると発芽しない野菜もあるので、それぞれの性質に合わせて覆土を厚くしたり、薄くしたりします。薄く覆土するときは、周囲の土をそっと寄せる程度にしたり、ふるいで土をうっすらとかけるようにします。特に、好光性のレタスやセロリなどの種は、クワや手で押さえるだけで大丈夫です。豆類では、まいた種を鳥がついばんでしまうことが少なくありません。新聞紙や寒冷紗をかけるか、市販の鳥害対策用のネットなどを張るようにします。