苗作りと苗選び
野菜作りは初期成長を促すことが大切です。
暑さ、寒さから幼苗を守る
根や葉が出たばかりの幼苗期は、暑さや寒さ、また強い日ざしによって苗が傷むことがあるので、保温や遮光の目的で「トンネル(トンネルマルチ)」をかけたりします。種まき後にかける小さな「ホットキャップ」は、保温のほか、種を食べられてしまうのも防ぎます。市販品や大型のペットボトルを切って利用することもできます。発芽後は、日中に中が蒸れることがあるので、穴をあけたり、少しだけすそをあけたりします。また、苗が大きくなったら上のほうを破りますが、少しずつ外気に慣らすようにして、できるだけ長くかけておきます。トンネルは支柱を半円状にして、畝全体にかけます。霜よけには寒冷紗のトンネルをかけます。光線不足にならないよう、日中は寒冷紗をはずします。寒冷紗は遮光効果があるので暑さ対策にも用いられ、風通しがよいので蒸れによる病虫害の発生もなく、アブラムシなどの防虫効果も期待できます。保温が必要なときは、ビニールトンネルにします。コストがかからないのはポリエチレンフィルムで、ポリマルチと併用すると効果が高まります。ホットキャップ同様、日中に暑くなりすぎるときはすそをあけます。トンネルは早くからかけると株が軟弱になるので、初霜がおりてからにします。トンネルはつくらず、支柱を立てて屋根のように寒冷紗やよしずなどを張る方法もあります。暑さよけの場合は西側に傾け、寒さよけなら北側を閉じるように傾けます。北側の畝を高くしたり、笹を立てたりするのも寒さよけになります。
移植栽培するために
移植栽培をする場合、種は苗まで育てる「苗床」にまくか、トロ箱や鉢、プランターなどにまいて間引きながら育て、植えつけ苗にします。根が傷みやすく移植を嫌う場合は、ポリポットやジフィーポットなどに数粒まいて間引き、1本の苗にする方法もあります。これなら、根の周りの土「根鉢」をくずすことなく植えつけられます。家庭菜園ぐらいの規模なら、箱まきやポットまきが楽で作りやすいでしょう。
間引いて1本立ちの苗を作る
種をまく「床土」は、畑土と堆肥を半々にまぜて用意します。市販の野菜培養土でもかまいません。水はけがよく、病気の心配がない土であることが重要です。日当たりがよく、風が強く当たらない場所で、水やりをしながら苗を育てます。箱まきなら乾燥防止に新聞紙を敷き、その上からスプレーで水やりをする方法が簡単です。発芽が見られたら新聞紙ははずします。発芽して本葉が開いたころから、込み合った部分の苗を引き抜く「間引き」を行います。病害虫の被害があるもの、小さすぎたり大きすぎたりするものからとり、数回で決められた株間にします。一度に行うと、葉が大きくならなかったり、その後の成長で不具合が出てきたときにカバーできなくなります。1回の間引き作業で、込み合った部分が半分くらいになるのを目安にします。間引くときは、隣の残す苗の株元を押さえて傷つけないようにします。
移植で根を発達させる
「移植」は植えかえのことです。植えつけまでの間に、ほかの場所に植えかえることをいいます。移植栽培は、本葉2枚で移植床かポリポットなどに移植します。方法は次ページの植えつけと同じで、移植床に10~15cm間隔か、4~5号ポットに1本ずつ植えます。生育状態が悪いようなら、規定の倍に薄めた液体肥料か、硫安1つまみを施します。
よい苗を選ぶことが重要
病害虫のない茎葉が元気よく伸び、節問も詰まっている(葉と葉の間が狭い)がっしりした苗は、見るからに育ちそうです。とはいえ、窒素分を施して無理やり大きくした苗も、一見すると青々と葉を出し、大きく草丈を伸ばしています。これは、肥料が切れるとひょろひょろと元気がなくなります。見た目にごまかされず、よい苗を見つけるようにしたいものです。最初は生産・流通側が、しっかりした苗作りをしているかどうかをチェックします。種名、できれば品種名まで明示されており、葉裏や地ぎわに病害虫が発生していない苗、特に病気の多いナス科の野菜は変形した葉がない苗を選びます。売れ残って伸びたような苗ではなく、まだ子葉がついている新鮮な苗を求めましょう。草花と違い、根鉢をくずさず植えるので、鉢は大きめで根が下から出ていないものにします。トマトは大きなつぼみがついたもの、葉茎菜は大きすぎない苗を求めます。