果樹栽培・ガーデニングの基本

アンズの育て方・栽培方法

バラ科

ウメに似て、古代中国では「甘いウメ」ともよばれた果実です。完熟したものは生食用に、未熟なものはジャムやシロップ漬けなどに利用します。


アンズ・写真1
アンズの花・写真2
アンズの実・写真3

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栽培上のポイント

●よい果実を実らせるためには、短い短果枝 を多くつくるようにする。
栽培上の適地

●北海道南部以南の日本各地。
栽培上の難易度

●あまり芋をかけずに果実が収穫でき、花も 美しく、家庭向きの果樹。

アンズの果樹としての特徴

中国では種子を漢方薬とします。寒さには強く、北海道北部や東部などの極寒地を除けば、日本各地で栽培できます。あまり手をかけずに果実も実り、花も美しいですが、放任するとやや巨木となるため、あまりスペースのない場所に植えるときには、コンパクトに仕立てましょう。果実の成熟期が梅雨と重なりますが、雨に長くあたると裂果が多くなってしまいます。その点、空梅雨の年には裂果が少なく、よい果実が収穫できます。

アンズの栽培条件と品種選び

リンゴと同じように雨に弱く、やや乾燥した気候の地域に適しています。寒さには比較的強いのですが、寒冷な地域では、開花後、晩霜の害を受けることもあるので、地面から離すように樹高を高く作ります。アンズは自分の花粉で実をつける自家結実性の樹木ですが、安定していないため、確実に実らせるためには、人工授粉するか、スペース的に可能なら、異なる品種のものと混植しましょう。同じバラ科サクラ属の果樹であるウメ、スモモ、モモなどの花粉でも受粉しますが、開花期が少々ずれるため、受粉のタイミングが合わないことが多くあります。さまざまな品種がありますが、花が大きく美しく、加えて実つきのよい「平和」、裂果しにくく果実が生食にも加工にも向く「ハーコット」「ゴールド・コット」などがおすすめです。また、「山形3号」は「平和」より開花が1~2目早いため、この2種を混植し、「山形3号」を授粉樹とするのがよい組み合わせです。

アンズの栽培方法

植えつけの時期は、関東以南では12~2月ごろ、関東以北では3月が適期です。

庭植えは5m四方の土地に植えつける

やや重めの、湿気の多い肥沃な土を好みます。ただし、水はけがよいことも大切です。日当たりと風通しのよい場所に植えつけましょう。樹高はやや高くなるため、庭木としては横庭や裏庭などに適しています。コンパクトに育てるといっても、5m四方ほどの面積を確保できる場所に植えつけます。

庭木として花や実の美しさも楽しむには、3本仕立ての立木仕立てがよいでしょう。太い枝に、ウメやモモを高接ぎして楽しむこともできます。

古い枝は3~4年で更新

よい果実をならせるためには、花束状短果枝とよばれる短い短果枝を数多く作ることです。花はこの短果枝に多くつき、結実します。長呆枝や中果枝は、冬に男定して先端を3分の1から4分の1ほど切り戻しておくと、腋芽がわずかに伸びて翌年に開花する花芽をつけた短果枝になります。花をよくつける短果枝も、数年すると弱ってきます。古くなって衰弱した枝は、3~4年ごとに間引いて新しい枝に更新します。夏には、混み合った枝や茂った葉で日当たりや風通しが悪くなるため、間引きのための整枝をします。株の内側に入り込むように伸びる枝や、まっすぐ上に向かって伸びている枝、細く弱った枝などを切って取り除きます。

肥料はあまり必要としない果実ですが、冬に、株から50cmほど離れた場所に深さ20cmほどの溝を、株を取り囲むように掘り、有機質肥料などを施します。また、収穫後(7月ごろ)、お礼肥として液肥を施します。

アンズの品種の多くは自家受粉し、何もしなくても実を結びますが、確実に実をならせるためには、人工授粉をしましょう。開花したら、結実させたい花に、他品種の花粉のついた花を直接つけて、受粉させます。利用する花は、花粉を多くつける他品種のアンズ、あるいは、時期さえ揃えば、同じバラ科サクラ属のモモ、スモモ、ウメなどの花を用いてもよいでしょう。ちなみに、アンズの花をモモやウメの人工授粉に使うこともできます。

豊産性のアンズは5月に摘果

たくさんの花が咲き、その美しさも楽しめるため、ふつうのアンズは摘蕾をしなくてもかまいません。豊産性のアンズは、実を多くつけすぎると果実が小さくなったり1年おきに実を結ぶ隔年結果となったりするので、1短果枝に1果(20~30葉に1果)程度に摘果します。果実の間隔は7cmほどになるくらいが適当です。摘果する時期は5月上旬~下旬ごろがよいでしょう。

果実が黄熟し、表面が光沢と紅色とを帯びるころになったら収穫の適期です。生食したりジャムにする場合は、完熟後に収穫するのがよいでしょう。

葉が縮れる縮葉病や、果実に黒い斑点ができて裂けてしまう黒星病などが発生しやすいので、収穫する果実に残留しないように、早い時期に薬剤によって予防しましょう。

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